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国会での言論統制に関して

 投稿者:ケイさん  投稿日:2008年11月 9日(日)03時19分52秒
  通報 編集済
  前回紹介した松浦潤氏の 日本のやきもの【鑑賞と鑑定】「第三巻 瀬戸・美濃・京焼 楽」という本の中で、氏は佐野乾山事件の三つの謎として、下記3点を挙げています。

① 何故、科学鑑定がなされなかったのか
何故、真作派はある時期を境に沈黙してしまったのか
③ 贋作者は誰か?

① に関しては、前回書いた科学鑑定が実はされていたという話に繋げています。それでは、②の何故、真作派はある時期を境に沈黙してしまったのかに関してはどうでしょうか? 現在の贋作派の人達(松浦潤氏、ウィルソン氏、出川直樹氏)はこの②が贋作であるという証拠だと主張しています。すなわち、
多くの贋作との意見をもった人びとが、今も堂々とみずからの思うところを主張するのに反し、真作説に走った側は、しだいに口を閉ざして弱腰になり、結局、世間一般は贋物事件としての一件落着を憶測するようになるのである。
という理論です。
このような記述を読むと、これらの人達は、過去の経緯を本当にきちんと調べているのだろうか?と疑問を持ってしまいますが、専門家の人達が過去の経緯を調べることなくこんな事を書くはずはないと思いますので、恐らくは全て分かっていて書いているのでしょう。

真作派に人達が沈黙した理由は、http://homepage2.nifty.com/hokusai/sano/genin.htm に詳しく書きましたが、要は、国会文教委員会での言論統制が原因です。

昭和37年10月29日の第41回国会文教委員会小委員会で高津議員、濱野議員の
たとえば東京国立博物館の林屋晴三氏とか、あるいは京都国立博物館の藤岡了一氏とか、あるいは東大の乾山、先琳の研究家で、第一の専門家のように認められている山根有三氏とか、そういう人々の自説をじゃんじゃん書かしておった。宣伝しておった。
と、文部事務官清水康平氏文化財保護 委員会事務局長を追及しています。これに対して、清水氏は、
やはり学者としては正々堂々と自分の研究と経験を発表するのもよいが、どうか権威ある学術雑誌に発表すると同時に、やはり何といっても国家公務員であるから良識によって行動してもらいたいということを深く注意を喚起いたしました。それぞれの博物館長はそれぞれの技官にそれを通知し、また会議もして検討をいたしたという報告を受けておる次第でございます。」

これを読めば、会社や大きな組織に属したことのある人であれば、この結果がどうなったかは容易に推測できるでしょう。自分の会社の役員や社長が自分書いた論文に関して国会で詰問されたことを考えてみて下さい。当然、国会に出た役員や社長から「自粛せよ」とのお達しがでるでしょう。また、仮に役員や社長が太っ腹であったとしても、直属の課長や部長達が上に余計な気を使って大騒ぎして、自粛を強要されることでしょう。
これによって、真作派のメインのメンバーであった東京国立博物館の林屋晴三氏、京都国立博物館の藤岡了一氏、東大の山根有三氏などは一切発言できなくなったのです。
以上のような状況を考えると、松浦氏が“奇怪”と感じている「「佐野乾山」はまぎれもない真作であると強く主張し、展覧会まで開催してデモンストレーションしていた論者が水尾比呂志のような一部の例外を除いて、翌年の昭和38年には沈黙してしまったこと」の理由も分かるはずです。
昭和37年10月29日の国会で清水康平氏が圧力を受けたのですから、それ以降(昭和38年)には、真作派の人達は沈黙せざるを得なかった訳です。真作派の多くが国家公務員だったことが禍しました。そして、松浦氏が「水尾比呂志のような一部の例外を除いて」と書いた水尾氏は当時は武蔵野美術大学助教授でしたから、国家公務員のような圧力が掛からなかったので、変わらずに発言を続けてきたのです。

国家公務員である大学や研究機関が真作説を学術的にを発表することに対して圧力をかけたこの事実はほとんど知られていません。佐野乾山事件において、これほど重要な意味を持つ国会でのまさに「言論統制」に関して記載している本が現状ほとんどないことは本当に情けないことです。佐野乾山事件というとお決まりのように「国会でも議論された」というような表現が使われているのですが、その国会での議論された内容まで書いてあるのは、私の知る限り、「真贋白崎秀雄著、と「真贋 尾形乾山の見極め渡辺達也著の2冊だけです。

そう考えると、表面的でセンセーショナルな内容だけを報道し、国会での言論統制に対してチェック機能を果たせなかったマスコミにこそ、その責任の大部分があるように思えます。
 
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